名古屋高等裁判所金沢支部 昭和30年(う)73号 判決
しかし、職業安定法第六十三条第二号にいわゆる職業紹介とは求人及び求職の申込を受け求人者と求職者との間における雇用関係の成立を斡旋することをいい、必ずしも右斡旋の結果両者間に雇用関係の成立することを要するものではないと解すべきである。また同法第五条にいわゆる雇用関係とは必ずしも厳格に民法第六百二十三条の意義に解すべきでなく、広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を得て、一定の条件の下に使用者に対して肉体的或は精神的労務を供給する関係にあれば足りるものと解するを相当とするところ、原判決挙示の証拠を綜合すれば、被告人は原判示第一のとおり各職業の紹介をなしたことが明らかであり、かつ、橋本栄子は山崎与七から前借金四万円を受け、蓑千代子、西川香代子、稲垣小夜子はいずれも三万五千円、角内一子は二万五千円、の各前借金を泉すえ子の内縁の夫穴田常吉から受け、右橋本栄子は山崎与七方において、蓑千代子、西川香代子、稲垣小夜子、角内一子はいずれも泉すえ子方において売春の業務に従事することを約し、右山崎与七及び泉すえ子はそれぞれ自己の営業範囲内に於て売春行為をさせるがためこれ等の者を雇入れたものであることが明らかに認められるので、いずれも職業安定法にいう雇用関係が成立したものと認めるを相当とする。弁護人の指摘する大審院の判例は本件の場合には適切でない。従つて原判決が被告人の所為を職業安定法第六十三条第二号に問擬したのは正当であつて、原判決には所論のような違法はない。論旨は理由がない。
(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)